mudanobunagaのブログ

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脳卒中後の歩行中に起こる脊椎分節運動の変化

Journal of Human Kinetics volume 16, 2006, 39-56より

 

Spinal Segmental Movement Changes during Treadmill Gait after Stroke

要約?

背景:

歩行障害に関するほとんどの研究は、下肢に焦点を合わせています。 しかし、歩行は背骨を含む複雑な全身運動です。本論文の目的は、軽度の脳卒中患者のトレッドミルでの歩行中の脊椎の分節運動を研究することでした。

方法:

光電子システムを使用して、15人の片麻痺患者(左側7人、右側8人)のトレッドミル歩行中の脊椎の動きをC7からS2まで7つのセグメントに分割して分析し、調査しました。 被験者はトレッドミル上を自分なりに普通の速度で歩きました。すべてのデータは歩行サイクルごとに正規化し、補正をおこないました。脊椎セグメントの動きのパターンは、矢状面(横から)と前頭面(前から)の両方で分析し、計算されました。

結果:

3つの異なるサブグループが見つかりました。最初のグループは矢状面の歩行サイクルごとに1つの完全な振動サイクルのみで、2番目のグループは位相がシフトした2つの振動サイクルを持ち、3番目のグループは2つの異なる振動を持ちますが、時間と振幅。振動の1つは別の振動よりもはるかに小さくなります。前額面では、第1グループと第2グループでは脊椎が麻痺側に曲がっていましたが、第3グループでは脊椎が硬く、非麻痺側にわずかに曲がっていました。 脳卒中により軽度の歩行障害のある患者では、脊髄運動が 健康な被験者と比較して、パターンはかなり変化しています。 これは、歩行の生体力学的効率を損なう可能性があります。

 

脳卒中後の歩行様式は自立歩行が達成されても通常の動きと異なり変化していましたという論文です。面白いことに歩行のタイプが大きく3パターンに分かれるものの、全て脊椎のシフトを伴うということです。

nの少ないサブグループでの解析というところに注意が必要そうです。

ちょっと詳しくみてみましょう。

結果を見てみると・・・

「3つのサブグループ全てで(これがメインアウトカムでしょう)、脊椎セグメントの一番上と一番下の動きに一定の方向性がなかった。歩行中に脊椎のわずかな後傾が認められていた。静止立位をとる間、全員の腰と肩のラインは平行でなかったが歩行を始めると平行を保った。歩行を始めると麻痺のない肩を常に前に出し、その範囲で前後に回旋していた。」

「通常でない動作は体幹の持つ歩行中のエネルギー節約機構を損なう可能性がある」

ということで後ろ重心で、麻痺のない側を前に突き出しながら麻痺のある側を引きずる形の歩行をしていた、細かく見てみると3つくらいのパターンがありそうだ、メカニズムが不明な上に数が少ないのでこれが全てかよく分からない、過去の報告と照らし合わせるとエネルギー節約機構を損なうことで歩行にマイナスの影響を与えているのではないかということですね。

残念なことに被験者の情報が詳しくなく、麻痺の程度が分からないというオチがあります。でもみんな杖などを使わず独歩であることを考えるとほとんどがBrunnstrome Stage 5-6くらいの軽度麻痺と考えても良いのではないでしょうか。それ以下で独歩は割と特殊な事例が多いみたいです。